2015/09

「谷崎潤一郎と祖父水野鋭三郎と父森田勝一の話」

◆2015年4月4日に行われた第19回谷崎潤一郎研究会での特別インタビューを受けて、当日のゲスト、森田チヱコさんがご寄稿くださいました。

「谷崎潤一郎と祖父水野鋭三郎と父森田勝一の話」 
――第19回 谷崎潤一郎研究会でのインタビューを終えて


明治半ばから昭和にかけて祖父水野鋭三郎(1864-1941)は大阪堂島に住んでいた。その頃、偶然にも文豪といわれた作家谷崎潤一郎と松子夫人のロマンスに関わることになった。それは鋭三郎の甥、卜部詮三氏と松子夫人の長姉森田朝子様が結婚されて森田家を継いだことによる。
以来、両家の交流は祖父、父、私と三世代に及び、谷崎夫妻のエピソードが残されている。今も、我が家には谷崎夫妻の書状が残され、その文面から当時の事情が読み取れる。どれも興味深い一級の資料であるが、明治、大正、昭和にわたる大文豪、谷崎に関する記述は素人に容易にできるものではなく、長くそのまま放置していた。
書簡は父勝一が所持していたが、六通が全てであったかは定かでない。つい最近も、岡山県井原市の伯母宅から二通の額入り書状が報告されている。これらは一連のものであり、谷崎が阪神芦屋の「打出下宮塚の家」に松子夫人と結婚前後に居住された時のものである。松子夫人が晩年にこの書簡の存在をご存知になり、大層お気遣いであった。個人の「私信」である書状を不如意に扱えば、関係者に不愉快、迷惑になるので、今日まで極力公開を避けてきた。
その後、関係する近親者の多くが他界され、またこの「谷崎没後五十年記念」の年を契機に、放置すると闇に埋没するであろうこの一級文献を学問的に正しく解明する必要性を再認識したことである。幸いこの度、谷崎文学研究家、早稲田大学千葉教授のご尽力により「新資料 谷崎潤一郎・松子、水野鋭三郎宛ほか書簡六通――森田チヱコさんに聞く 千葉俊二」(『文藝別冊 谷崎潤一郎 没後五十年、文学の奇蹟』河出書房新社、二〇一五年二月)の一記事となった。お陰で流麗で達筆な松子夫人の書状も見事に読み解かれ、不明であった送付年月日もほぼ解明され、文脈の意味も他との照合で明らかになり、文豪谷崎をめぐる当時の諸事情がより鮮明となった。
父勝一が実母の「森田」を継ぎ、私は水野姓でないが、今も私の本籍、墓所も祖父や父と同様であり、親戚内では水野鋭三郎の孫として扱われている。私は昭和十四年生(現七十五歳)にて祖父鋭三郎は私が二歳の昭和十六年に、また祖母なをは昭和十八年に他界したので祖父母の記憶は薄く、祖父と谷崎夫妻のエピソードは両親や伯母の話によっている。本来、鋭三郎は谷崎夫妻の「黒子役」であったので、これらの話はあまり表面出てないことが故人らへの礼儀であるのかもしれない。
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「没後50年 文豪・谷崎潤一郎 ―愛と美を求めて―」

北海道立文学館で、以下の展覧会が開催されます。

道立文学館開館20周年
没後50年 文豪・谷崎潤一郎 ―愛と美を求めて―

期間:2015年9月19日(土)~11月15日(日)
開館時間:09:30~17:00(入館16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日を除く)、9月24日(木)、10月13日(火)
観覧料:一般700円、高大生450円、小中生300円(団体割引有)

文豪・谷崎潤一郎(1886年~1965年)が亡くなって今年で50年になります。耽美主義に連なるデビュー作「刺青」から、関東大震災を機に関西に移住してとりくんだ「痴人の愛」「卍」、日本の伝統と美を発見した「春琴抄」、「潤一郎訳源氏物語」、「細雪」、そして老いとエロスの心理を見つめた晩年の「瘋癲老人日記」まで、芸術に生涯を捧げた谷崎の愛と美の世界を、松子夫人宛書簡などの資料を交えてご紹介します。

主催:北海道立文学館、公益財団法人北海道文学館、北海道新聞社
協力:中央公論新社、芦屋市谷崎潤一郎記念館
後援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会

>>詳細はこちらをご覧ください。
>>イベントのチラシ(PDF)

「大谷崎と挿絵の世界~楢重・松篁・棟方など~」

芦屋市谷崎潤一郎記念館で、以下の展覧会が開催されます。

d2ea7052.jpg2015年秋の特別展 没後50年・文豪は時空を超えて
「大谷崎と挿絵の世界~楢重・松篁・棟方など~」


期間:2015年9月12日(土)~12月6日(日)
開館時間:10:00~17:00(入館16:30まで)
※月曜休館(ただし祝日は開館し、翌日休館)
※9月21日は開館し、24日は休館。
料金:一般400円 大・高生300円 65歳以上200円(団体割引あり) 小中学生無料

谷崎は挿絵や装丁に強いこだわりを持っており、名作の中には、画家とのコラボレーションによって完成されたものも少なくはありません。谷崎が古典回帰を果たした記念の作「蓼喰ふ虫」は、小出楢重の挿絵に励まされて書き進めたことを明かしています。また、谷崎が三度にわたって挑戦した源氏訳では、旧訳のポスターを鏑木清方が、新訳では伊東深水が手がけています。さらに、新々訳の彩色挿画入豪華版は、安田靫彦や上村松篁など、名立たる日本画家たちが一斉に挿絵を手がけ、現代における最上の源氏絵巻となりました。そして、「鍵」「瘋癲老人日記」などの晩年三部作は、棟方志功の力強い板画が作品世界を如実に表現しています。
ほかに、田中良の描いた「痴人の愛」や田村孝之介の「細雪」挿絵原画、小磯良平の「細雪」口絵原画、横山泰三の「台所太平記」装丁原画など、貴重な原画を取り揃え、没後50年を記念し一挙に公開します。華やかな谷崎文学の世界をご堪能下さい。【芦屋市谷崎記念館・永井敦子】

【主催】芦屋市谷崎潤一郎記念館
【後援】読売新聞大阪本社 武庫川女子大学 大阪よみうり文化センター
【協力】 中央公論新社

>>詳細はこちらをご覧ください。
>>イベントのチラシ(PDF)

『谷崎潤一郎全集』第17巻

決定版『谷崎潤一郎全集』第17巻(第5回配本)

『蘆刈〔潤一郎自筆本〕』
蘆刈
『春琴抄』
春琴抄
顔世
『摂陽随筆』
陰翳礼讃
春琴抄後語
装釘漫談
文房具漫談
直木君の歴史小説について
東京をおもふ
私の貧乏物語
大阪の藝人
半袖ものがたり
『鶉鷸隴雑纂』
厠のいろいろ (※)
旅のいろいろ (※)
【単行本未収作品】
韮崎氏の口よりシユパイヘル・シユタインが飛び出す話
夏菊
【雑纂】
岡田時彦弔辞
文運の進歩
言葉
追悼の辞に代へて
作者の言葉〔「夏菊」〕
「夏菊」休載に就いて

解題(宮内淳子)

附録●月報5
性と遊びと文学と 小川洋子
「春琴抄」の音楽 奥泉光

(編集委員/千葉俊二・明里千章・細江光、中央公論新社、6,800円+税)

(※)「いろいろ」のくり返し記号はひらいて表記した。
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TANIZAKI Studies Blogs
2016年度をもって閉会した谷崎潤一郎研究会の公式HPを引き継いで設置。
谷崎潤一郎(1886-1965)および周辺の文学・文化に関する研究の情報提供を行う。

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当サイトに関するご連絡は以下のフォームからお願いします。 ※谷崎潤一郎に関するご著書・ご論文等を刊行・発表された方は、ぜひ情報をお寄せください。150-300字程度の要旨または紹介文をお送りいただけるとありがたく存じます。

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