2016/12

『花園大学日本文学論究』第9号

・福田博則「谷崎潤一郎の戯曲「顔世」─「春琴抄」の表現方法との関連から─」

 [要旨]大正期には積極的に戯曲を発表していた谷崎だが、昭和に入ってからは戯曲「顔世」一篇を発表したのみである。この戯曲「顔世」には、同年に発表された小説「春琴抄」での試みが大きく関わっていると考えられる。谷崎は「春琴抄」で、架空の人物である春琴を、実在する人物であるかのように描こうとしていた。ここに関連して「顔世」では、戯曲という独特の形式を取って、顔世という名の、顔の見えない女性の姿を読者の前に表現しようとしたと考えられる。こうした試みがあって「顔世」は上演に向いた戯曲ではなく、これまで一度も上演はされたことがない。評価の高い作品とはいえな い「顔世」だが、この作品には谷崎の「春琴抄」からの創作上での挑戦というものがうかがえるのである。【福田博則】

『谷崎潤一郎読本』

da25f541.jpgあなたの知らない「谷崎」が、ここにいる。
「谷崎潤一郎全作品事典」を含む、21世紀の文学入門。

テクスト、メディア、文化と芸術、研究の現在とキーワード
複数の視点から気鋭の研究者たちが挑む──。
不世出の文豪が開いた、豊饒なる文学世界の見取り図。
(※本書オビ文より)
***
決定版全集第25巻所収「創作ノート」をめぐる座談会を皮切りに、巻頭論文5本を掲げ、谷崎のメディアイメージを追い、文学と他領域の接続をはかり、谷崎と文学研究の現在を捉えた。巻末に「谷崎潤一郎全作品事典」を付す。──谷崎テクストとの、新たな対話をはじめるために。【日高佳紀】

■内容と執筆者■
座談会─複数の「谷崎」をめぐって
明里千章、千葉俊二、西野厚志、細江光、五味渕典嗣、日高佳紀
Ⅰ─小説機械、谷崎潤一郎
千葉俊二/大浦康介/飯田祐子/五味渕典嗣/日高佳紀
Ⅱ─谷崎をめぐるメディア・イメージ
徳永夏子/篠崎美生子/平野芳信/山本亮介/笹尾佳代/安藤徹/井原あや/杉山欣也
Ⅲ─接続するテクスト
城殿智行/木股知史/真銅正宏/中村ともえ/石川巧
Ⅳ─谷崎テクストの現在地
金子明雄/生方智子/岩川ありさ/森岡卓司/榊原理智/西村将洋/坪井秀人/瀬崎圭二/牧義之/西野厚志
Ⅴ─谷崎潤一郎論のために
(データ室)佐藤淳一/岸川俊太郎/佐藤未央子/柴田希/山中剛史/嶋田直哉
(全作品事典)明里千章/五味渕典嗣/千葉俊二/永栄啓伸/日高佳紀/細江光/安田孝/山口政幸

>>目次等の詳細はこちら(出版社のサイト)

(五味渕典嗣・日高佳紀編、翰林書房、3,200円+税)

『谷崎潤一郎全集』第2巻

決定版『谷崎潤一郎全集』第2巻(第20回配本)

『恋を知る頃』
恋を知る頃
誕生
あくび
恐怖
『甍』
序〔『甍』〕
憎念
熱風に吹かれて
『麒麟』
序〔『麒麟』〕
捨てられる迄
饒太郎
春の海辺
【単行本未作品】
少年の記憶
【雑纂】
劇場の設備に対する希望
著者へ〔小野賢一郎『新聞記者の手帳 第一集』〕

解題(三嶋潤子)

附録●月報20
谷崎を戦前に読む 北村薫
谷崎潤一郎とわたし 瀧羽麻子

(編集委員/千葉俊二・明里千章・細江光、中央公論新社、6,800円+税)

『尾道市立大学日本文学論叢』第11号

・山田麻美「谷崎潤一郎「春琴抄」論」
 
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TANIZAKI Studies Blogs
2016年度をもって閉会した谷崎潤一郎研究会の公式HPを引き継いで設置。
谷崎潤一郎(1886-1965)および周辺の文学・文化に関する研究の情報提供を行う。

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