(特集:クィア・リーディングとは何か)
・久米依子「クィア・セクシュアリティを読むことの可能性─谷崎潤一郎「秘密」から江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」へ─」
 
[要旨]近代文学研究において、クィア・リーディングはフェミニズム批評のようには積極的に展開しなかった、という特集の主旨に沿い、まずフェミニズムとクィアの運動の方向性の差異を確認した。次に近代日本のジェンダー構造が性の多様性の認知を抑圧している面があるのではないかと仮定し、女装小説である谷崎潤一郎「秘密」と江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」のセクシュアリティ表現を、異性愛に回収される型とクローゼットに隠蔽される型として、セジウィックやバトラーの理論を参照しつつ検証した。さらに現代のライトノベルの中の、性指向の多様性を認める物語を取り上げ、クィア・リーディングの可能性を考察した。 【掲載誌より】